The previous night of the world revolution~P.D.~
「まぁ、ご心配には及びませんよ」

俺は余裕綽々にそう言った。

「彼女は確かに『青薔薇連合会』きっての女傑。でも…彼女に出来るのは、精々時間稼ぎくらいでしょう」

と、完全に舐めきった態度で、俺は拳銃を指に引っ掛けてくるくると回した。

…愛用の死神の鎌ではなく、敢えて拳銃を、である。

シュノさんが、このことに気づいてくれると良いのだが。

見せびらかすようにペン回し、ならぬ拳銃回しをしているのには理由がある。

いかにも拳銃を使いますアピールをして、死神の鎌を持ってきていないことをシュノさんに気づいて欲しいからだ。

俺と言えば死神の鎌、死神の鎌と言えば俺であることは、『青薔薇連合会』の幹部なら誰もが知るところ。

その俺が、戦場に死神の鎌を持ってきていない。

つまり、本気で戦うつもりはないということだ。

「…どういうつもり?」

と、シュノさん。

時間稼ぎのつもりなんですよと、素直に言いたいのだがそうもいかない。

何とか気づいてもらえることを祈るしかない。

「あなた程度の実力じゃ、時間稼ぎ程度にしかならないでしょうって言ってるんです」

俺は再度、時間稼ぎという言葉を繰り返した。

うーん。本人を前にしても、思ってることを正直に言えないのが辛いところ。

気づいてもらえると良いのだが…。

「…そう。分かったわ」

…お?

シュノさんは、もう片方の手にも拳銃を持って、俺とミミニア両名に向けた。

「本当に時間稼ぎにしかならないのか、試してあげるわ」

…さすがシュノさん。そう来なくては。

それなのに。

「こんな女を相手になんてしていられない。先を急ぐぞ!」

全く空気を読まない女、ミミニア。

ちょっと。これから因縁の対決が始まるところでしょうが。

敵前逃亡とはつまらない。

「無駄ですよ。戦わずに逃してもらえる相手じゃありません」

「だが、我々には時間が…!」

知ってる。

その時間を少しでもなくすのが、俺の役目ですから。

「だから、出来るだけさっさと済まそうって言ってるんです。俺が前に出るから、精々援護でもしてください」

「…ちっ。他に術はないか…!」

そうそう、そういうことです。

こんな展開になるなら、やっぱり連携の取れたエペルと組むんだった、とか思ってそうな顔だな。

お前が言ったんだぞ。俺達を野放しにはしておけないからってな。

ここに来て裏目に出たな。

まぁ、俺としては助かりましたよ。

「さて…じゃあ、遊んであげましょうか」

あなたの美しいお手並み、拝見させてもらいますよ。シュノさん。
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