The previous night of the world revolution~P.D.~
――――――…ルレイアとミミニアが、上の階でシュノと交戦を始めた、その頃。

『青薔薇連合会』地下廊下では。

「ここで会ったが百年目って奴だなぁ。え?…ルル公」

俺とエペルの前に立ちはだかり、ライフルを向けているのは。

「…アリューシャ…」

…まさか、お前にライフル向けられる日が来るとはな。

こればかりは洒落にならない。

「よその組織に裏切ったんだって?」

「…悪いな。俺はルレイアの傍にいたい。ルレイアと平穏な日々が過ごせれば、それで良いんだ」

「…」

これは本心である。

ルレイアと平穏に生きられるのなら、『青薔薇連合会』でも『ブルーローズ・ユニオン』でも、帝国自警団でも構わない。

だからって、『青薔薇連合会』を本気で出ていきたい訳じゃないけどな。

あくまでそれは、最後の手段にしておきたい。

「俺を軽蔑するか?」

「…いいや?騙されたんなら騙された方が悪いし、裏切られたんなら裏切られた方が悪いんだよ。ルル公のせいじゃねぇ」

そうか。

アリューシャ、お前のことは常々…馬鹿だなぁと思ってばかりだったが。

そういう割り切った考えを持っているところは、素直に尊敬するよ。

そして、アリューシャの尊敬しているところは、その考え方だけじゃない。

「でも…裏切ったことに対して、報復を受ける覚悟くらいはしてるよな?」

アリューシャ愛用のライフルが、真っ直ぐに俺の方を向いた。

…このライフルの腕前。これだけは…尊敬を通り越して、最早畏怖である。

アリューシャは躊躇いなく、ライフルの引き金に指をかけた。

引き金を引き絞ると同時に、俺はエペルを突き飛ばして押し倒し、俺自身も床に転がるようにして伏せた。

危ねぇ。

危ねぇ、けど…。

「っ、貴様、何をする!」

俺に突き飛ばされたエペルが、怒気を滲ませた声で凄んできた。

おい。今それどころじゃないだろ。

「お陰で助かっただろうが。文句を言うな」

「文句だと…!?大体、何故侵入がバレている!?隠し通路を使えば問題なく侵入出来ると、太鼓判を押しただろう!」

下らないことでキレやがって。侵入は出来ただろうが。

ただ、侵入して先で待ち伏せされてたってだけで。

「知るかよ。先行したルレイアとミミニアが見つかったんじゃないのか?」

「…ちっ…」

ルレイアもまた、侵入がバレたのは俺とエペルのせいだと責任を擦り付けていることを、俺は知らない。

「…仲良くしてるところ、悪いね」

と、言ってアリューシャがライフルを降ろした。

仲良くはしていないがな。

「一応言っとく。投降したいなら聞いてやる、ってアイ公が言ってたぞ」

…成程。

今の一連の合同と会話で、色々と理解したことがある。

同時に、俺は内心ホッと胸を撫で下ろした。

アリューシャにライフル向けられてる状況で、何でホッとしてんだと思われるかもしれないが。

でも、ホッとしたよ。

そもそも、アリューシャがこうして、俺達の前に姿を現している時点で、ほぼ確信していた。

アイズは、俺達の仲間は…俺達が本気で裏切って、本気で『青薔薇連合会』に奇襲をかけに来たのではないことに気づいている。

俺達の目的…セルテリシアが辿り着くまでの時間稼ぎ…に、協力してくれているのだ。

所属は違えど、俺達は未だに志を同じくする仲間だ。

それが分かって、安心しない奴がいるのか?
< 607 / 634 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop