The previous night of the world revolution~P.D.~
そのまま、僕はセルテリシアをお姫様抱っこして、『青薔薇連合会』本部地下まで走り抜けた。
 
セルテリシアを抱えて走ったお陰で、さっきより早くなった。

そして、ようやく。

「…ここです」

黒い天幕を潜り抜けた先に、暗くて広い空間が広がっていた。

僕は、そこでようやくセルテリシアを降ろした。

ふぅ。運搬お疲れ様でした。

「…ここは…?」

「地下牢です」

「えっ…」

ここは『青薔薇連合会』本部地下にある拷問室、の中にある地下牢の一室である。

「セルテリシア様を地下牢に…!?貴様何を考えている!?」

セルテリシアの護衛が、僕の胸ぐらを掴まんばかりに凄んできた。

この人達、短気にも程がありません?

カルシウムが足りてない。カルシウムが。

「大きな声出さないでくださいよ。バレたらどうするんです」

もうバレてると思いますけどね。

「それに、ここは地下牢ですが、閉じ込める為の場所じゃありません。地下牢に見せかけてるだけです」

大体、この牢は第9地下通路に繋がってるんですよ?

脱出口のある地下牢なんて、本末転倒じゃないですか。

地下牢はカモフラージュで、あくまでここは地下通路の出入り口に過ぎない。

その証拠に。

「ほら、鍵も掛かってないでしょう」

地下牢には立派な鉄格子が嵌められていたが、肝心要の鍵は掛かってなかった。

つまり、地下牢の内側から普通に開けられる。

「…」

セルテリシアの護衛は、不満たらたらの顔で僕を睨んでいた。

やれやれ。仲良くなれないものですかね、この人達は。

「このまま地下を抜けて、階上に上がりましょう。今頃ルレイア師匠達も、任務を遂行しているでしょう」

「ありがとうございます、ルーチェスさん。案内をお願いします」

セルテリシアは素直に僕に礼を言い、ぺこりと頭を下げた。

リーダーはこんなに素直なんですけどね。

むしろ、リーダーがこれほど素直過ぎるから。

敢えて周囲の人間が、過剰なくらい警戒心剥き出しなのかもしれない。

過ぎたるは及ばざるが如し、って知ってます?

…まぁ良いでしょう。

僕の知ったことではありませんから。

「こちらです。くれぐれも音を立てないように、ついてきてください」

「はい」

…時間稼ぎ、ありがとうございます。

今行きますね。
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