The previous night of the world revolution~P.D.~
―――――…こちらは、現在シュノさんと戦闘中のルレイアです。

「ちっ…!」

もう何回目か分からない、ミミニアの舌打ちをBGMに。

俺とシュノさんは、何とも滑稽な争いを繰り広げていた。

これまで何度も共に戦っている経験から、シュノさんの実力も、手の内もよく分かっている。

それはシュノさんもまた然りである。

だからこそ分かる。

シュノさんは、わざと手を抜いて戦っている。

俺も同じだ。敢えて手加減をして、致命打を与えように動いている。

無論、戦いを長引かせる為だ。

これが本気同士の戦いだったら、今のこれより遥かに熾烈な戦闘が繰り広げられていたことだろう。

それこそ、建物が崩壊しかねないレベルで。

それに比べたら、こんなのお遊びみたいなものですよ。

俺とシュノさんの本当の実力を知っている人が見たら、「何のお遊戯ですか?」と突っ込まれるに違いない。

それくらい、つまらないお遊び。

おまけに、そんな遊びをお互い至極真面目な顔してやってるから、余計滑稽である。

さっきから俺、何回も笑い出しそうになってるんですけど。

俺が笑ったらシュノさんまで笑っちゃって、ここまでの演技が全部台無しになってしまうので。

必死に我慢してるんですよ。あぁ辛い。

いい加減飽きてきたから、早く終わらないかなぁ…と。

思っていた、丁度そのとき。

「…お?」

俺のスマートフォンから、『frontier』の通知音が鳴り響いた。

緊迫した戦場に見合わない、ルトリアさんの美声である。

これには、ミミニアもぎょっとしていた。

シュノさんもちょっとポカンとしていた。

済みませんね、ちょっとタイム。

俺は素早く後方に飛び退いて、スマホチェック。

「何をやっている!そんな悠長なことを…!」

すかさずミミニアが文句言っていたが、それどころではない。

こっちにはこっちの都合ってもんがあるんですよ。

そして、俺のスマホに届いたメッセージは、案の定。

この下らない茶番劇を終わらせてくれる、今最も欲しかった一言であった。

ルリシヤからのメール。

『もう終わって良いぞ』とのことである。

ありがとう。ずっと待ってました、その台詞。

「…お疲れ様です、シュノさん」

俺はスマートフォンをポケットに戻しながら、朗らかにそう言った。

あー。ずっと険しい顔してたから、顔面の筋肉が強張ってますよ。

「もう楽にして良いですよ」

にっこり笑ってそう言うと、シュノさんは目を大きく見開いた。
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