The previous night of the world revolution~P.D.~
ようやく「大将」がいらっしゃいましたね。

ようこそ、審判の間に。

「セルテリシア様…!」

「おのれ、セルテリシア様を離せ!」

自分達の仕えるボスが縛られているのを見て、芋虫状態の側近二人が叫んだ。

何を叫んでも、その芋虫状態じゃあ決まらないですよね。

セルテリシアは側近二人と違って、両腕を縛られているだけで、両足は拘束されていない。

従って、ルーチェスとルリシヤに囲まれながらも、自分の足で歩いてやって来た。

さすがに、サナリ派のリーダーを芋虫状態にして尋問するのは憚られるらしい。

「ルリシヤ・クロータス…!?死んだはずではなかったのか。何故生きている…!?」

芋虫一号のエペルが、ルリシヤの存在に気づいたらしい。

「地獄の底から舞い戻ってきた次第だ」

仮面をキラリと輝かせ、ルリシヤが答えた。

何その返事。格好良い。

「…ただケチャップの血糊で誤魔化してただけだろ…?」

ちょっとルルシー。そういうマジレスは無粋ですよ。

ケチャップの血糊と、それから防弾ベストですよね。

「…手荒な『歓迎』をしてしまって済まないね、セルテリシア・リバニー」

アイズが、セルテリシアの前に立ってそう言った。

「でも、こうするしかなかった。例え未遂だとしても、これ以上誰かを暗殺される訳にはいかなかったから」

「…」

アイズの言葉を、セルテリシアはぎゅっと唇を噛み締めて聞いていた。

ねぇねぇ、信用していた仲間(笑)に裏切られて、今どんな気分?と。

聞きたかったのだが、それを聞くのはアイズなので、俺は黙っておく。

残念ですよ。

「…そうか、そういうことか…!貴様ら、初めからこれが狙いで…」

今更になって、エペルは悔しそうに歯噛みしていた。

その通りです。気づいてたんじゃなかったんですか?

「なんと卑劣な…!」

「何が卑劣よ。卑劣なのはそっちでしょ。先にアシュトーリアさんに手出ししたんだから」

と、シュノさんが正論で返した。

偉い。その通りです。

先に殴ってきたのはそっちじゃないか。なぁ?

自分から殴っておいて、盛大に殴り返されたからって、被害者面するのはおかしいだろ。

「そーだそーだ!自業自得だばーか!」

アリューシャも絶好調ですね。

勝ち誇ったような口調のアリューシャに馬鹿にされて、エペルはまた目の色変えていたが…。

「…エペル、ミミニア。あなた達は少し黙っていてください。これは私の問題です」

セルテリシアが、静かに部下二人を制した。

お?

俺達に裏切られたショックで、しばらく茫然自失としているものかと思ったが。

意外と立ち直り早かったな。このお姫様は。
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