The previous night of the world revolution~P.D.~
「…アイズレンシア・ルーレヴァンツァさん」

「…」 

セルテリシアは両腕を縛られたまま、アイズのことをじっと見つめた。

アイズの方も、セルテリシアから目を逸らすようなことはしなかった。

…お互い、覚悟は出来てるって顔だな?

それは結構。

「これが、あなたのやり方なのですね?」

「卑怯だって責めるつもり?」

「…いいえ。シュノさんとアリューシャさんの仰った通り、先に手を出したのは私達ですから」

潔く自分の非を認められるのは、セルテリシアの長所だよな。 

「まんまと騙されてしまいました。…情けない限りです」
 
「…そうだね。だから君は、『青薔薇連合会』首領に相応しくない」

…と、きっぱり告げるアイズ。

ほう。言いますね。

「良い機会だから言わせてもらうよ。君は確かに、この『青薔薇連合会』で誰よりも首領の座に相応しい血筋だ」

偉大なリーダー、サナリ・リバニーの血縁者ですからね。

血の正統性で言えば、この中で最も『青薔薇連合会』首領に相応しい。

…しかし、それは血に限った話だ。

「…でも、首領に本当に必要なのは、血じゃなくて首領としての才覚だと、私は思う」

「…はい」

「無論、私だってまだ未熟な身だからね。こんな偉そうなことを言える立場じゃない」

いやぁ、充分相応しい器だと思いますけどね、アイズは。

少なくとも、俺よりは遥かに相応しいですよ。

そして、ここにいるセルテリシアよりも遥かに、優れた首領の器を持っている。

「でもこれだけは言える。君は『青薔薇連合会』首領に相応しくない」

きっぱり。

「…」

セルテリシアは、否定することなく俯いていた。

否定しないってことは、内心気づいているのだろう。

ルーチェスにも、「自分は首領に相応しくない」みたいなことを言ってたらしいし。

「今こうして、両腕を縛られた状態で私の前にいる時点で…。君はその器じゃないよ」

「…えぇ、分かっています」

そう言って、セルテリシアは顔を上げた。

ほう。
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