The previous night of the world revolution~P.D.~
…。

…成程、そう来ましたか。 

予想以上に聞き分けが良くて、こっちが拍子抜け。

「っ、馬鹿な…!」

「セルテリシア様、何を仰るのです!」

床に這いつくばってる側近二人は、こんなに聞き分けが悪いのにな。

「あなた方の思いは分かっています。期待に応えられず、申し訳ないと…常々そう思っています」

セルテリシアは、異論を唱える部下二人に向かって言った。

「私はこれまで…あなた方に言われるがままに動いてきました。アシュトーリアさんの暗殺だって…」

おい。目の前で暴露して良いのか。

まぁ、言われるまでもなく知ってることだから、別に良いですけど。

「皆を引っ張ることの出来る、強いリーダーになりたかった…。だけど私には…今の私には、それは出来ません。…情けない限りです」

「…セルテリシア様…」

よく分かってるじゃないか。

その通り、お前は『ブルーローズ・ユニオン』のリーダー、サナリ派の代表として情けない限りだ。

しかし、自分が情けないことを自覚して、素直に認める。

これが出来るという点で、俺個人としてはセルテリシアを好ましく思いますね。

人間っていうのは、虚栄心に浸りたい生き物ですから。

自分が実力不足だと認めることは、簡単に見えるようで、意外と出来ないものです。

「頼りないリーダーで、あなた方には本当に迷惑をかけます。あなた方の期待を分かっていながら、次期首領の座は諦めるなどと…本当は、こんなことを言いたくはありません」

「…」

「でも…相応しくない私が組織のトップに立って、『青薔薇連合会』が弱体化する様を見せるより…。私は、正しく組織を率いる器の持ち主に任せたいと思います」

アイズのことですね。

アイズと、アシュトーリアさんのことだ。

「その代わり…私は、私に期待してくれているサナリ派の皆さん…そして『ブルーローズ・ユニオン』の為に力を尽くしたいと思っています」

「…」

「『ブルーローズ・ユニオン』のリーダーという立場から、これからの『青薔薇連合会』を支えていけるように」

それはつまり…。

ヴァルレンシー派と表立って対立するのはやめて、むしろ協調路線を歩みたい、ということだ?

新しい試みですね。

でも、それがセルテリシアなりに出した答え。

偉大なサナリ・リバニーの子孫として、セルテリシアが『青薔薇連合会』の繁栄の為に出来る、精一杯。

「ご覧の通り、私には才能がありません。…あなた方の助けがなければ、『ブルーローズ・ユニオン』のリーダーとしても、まともにやっていけないでしょう」

身の程がよく分かっているようで。

何度も言いますけど、その正直な姿勢には好感が持てますね。

「こんな情けない、頼りない私でも…。ついてきてくれないでしょうか」

セルテリシアは、エペルとミミニア両名に縋るような視線を向けて、そう頼んだ。

…『青薔薇連合会』首領の座を諦めるなら、セルテリシアを擁立する意味はない。

エペルとミミニアは、セルテリシアを見限ってもおかしくなかった。

…しかし。

「…尋ねる必要などありません。私はセルテリシア様の臣下ですから」

「…何処までも、お供致します。セルテリシア様」

ミミニアが言い、エペルがそう言った。

良かったですね。

まぁ、この二人ならそう言うと思った。

「…ありがとう」

セルテリシアはホッとしたように微笑んだ。

…やれやれ。

これでようやく、一件落着と言ったところか。
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