The previous night of the world revolution~P.D.~
…と、思ったけど。

実は、まだ大事なことを聞いていないのだ。

『ブルーローズ・ユニオン』に潜入してからも、ずーっと気になっていたのだが。

下手に探りを入れたら、俺達の裏切りがバレてしまうかと思って、控えていただけで。

「ふぁ〜、終わった終わった。よし、勝利のコーラとポテチを、」

「まだ終わってないよ、アリューシャ」

「何!?」

アリューシャは忘れていたらしい。

「…?」

シュノさんも首を傾げてるから、これは忘れてますね。

もういっそこのまま、面倒なことは記憶の彼方に忘れたまま生きていたいなぁ。

しかし、残念ながらそうも行かなかった。

放置していたら、後でもっと酷い「大火事」になりかねませんから。

火種のうちに消せるものなら、そうしておきたい。

「君に聞きたいことがある」

「…?何ですか?」

アイズが、セルテリシアに向き直った。

その前に、アイズは片手でルリシヤに指示した。

小さく頷くと、ルリシヤはセルテリシアの後ろに回り。

パチンと、十徳ナイフを取り出した。

「っ、貴様!セルテリシア様に何を…」

エペルが声を上げようとしたが、ルリシヤは構わずにナイフを立てた。

セルテリシアの両腕を縛っている麻縄に向かって、だ。

ハラリ、と縄が解け、セルテリシアの両腕が自由になった。

同時にルーチェスとルルシーが、同じようにエペルとミミニア両名の拘束を解いた。

セルテリシアはともかく、こいつらまで開放するのは危険じゃないかと思うが。

これから、共に『青薔薇連合会』を支えていこうと決めたばかりの「同志」を、拘束したまま話をすることは出来ない。

アイズは、そう判断したのだろう。

それに、ここには『青薔薇連合会』の幹部が全員揃っているのだ。

いくらエペルとミミニアが暴れても、セルテリシアを守りながら、俺達を相手するのは不可能だ。

ってな訳で、暴れたきゃ好きにどうぞ。

しかし、この側近二人は血の気が多いけど、馬鹿ではない。

今ここで自分達が怒りに任せて暴れたら、セルテリシアの立場を悪くしてしまうことを理解している。

いかにも忌々しいといった表情をしながらも、抵抗するようなことはなかった。

良い子じゃないですか。

狂犬でも、お座りくらいは出来るようですね。

「『M.T.S社』と『霧塵会』のことだよ」

…皆さん、お忘れでないだろうか。

俺は忘れてた。思い出したのはさっきだ。 

こいつらの件を片付けないことには、俺達は枕を高くして眠れない。

「…あっ…」

シュノさんも忘れてたらしい。アイズに言われて思い出したようだ。

ルルシーは当たり前みたいな顔をしていたので、覚えてたらしい。偉い。

ルリシヤもルーチェスも同様。

…しかし、アリューシャは。

「…何だっけ?それ」

言われてもまだ思い出せないらしい。気持ちは分かる。

もう何もかも解決したような気分ですもんね。

このまま忘れちゃっても良いんじゃないかなぁ、と思うけど。

残念ながら、そうは行かないのが辛いところ。
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