The previous night of the world revolution~P.D.~
「…どうだった?ブロテ」

ユナが私に尋ねた。

『青薔薇連合会』をこの目で見た、その感想について聞いているのだろう。

「…欺瞞と傲慢が人の形をしてたら、あんな顔になるんだろうと思ったよ」

「…ルレイア・ティシェリーのこと?」

「そうだよ」

『青薔薇連合会』そのものは、大して怖くない。

実際、私達を出迎えたあの首領代理は、物腰も柔らかそうで、マフィアの幹部という印象は強くなかった。

あの人なら、取り入る隙はありそうだった。

それに、あの女幹部も。

あんなに若い女性が、『青薔薇連合会』の幹部だなんて…。

恐らく、余程幹部のなり手がいないのだろう。

それで、あんな女の子が幹部に取り立てられているのだ。

あるいは…あれもルレイア・ティシェリーの采配なのかもしれない。

自分に都合の良いことしか言わない人間だけを、敢えて幹部に据えているのかも。

あの男なら、それくらいのことはやりそうじゃないか。

私達にとって脅威なのは、『青薔薇連合会』そのものと言うより…あの男。

ルレイア・ティシェリーだ。

『青薔薇連合会』を実質支配しているのは、彼だという噂だし。

「ルレイア・ティシェリーか…。顔だけは良かったけどね」

と、シャニー。

「ちょっと、シャニー。何騙されてるのよ」

「違うよ。そうじゃなくて…あの顔なら、人を騙すのも簡単だろうってこと」

ユナに咎められ、シャニーはそう言い直した。

そうだね。

あの顔だけで、人を誑かすには充分だ。

本当に腹立たしい。

「あれじゃ、騙される人がいるのも納得だな。一見悪いことしそうな人には見えないし…」

「マフィアっていうのは、大概そうだろう?優しそうに見える人が、実は犯罪者だったりするんだよ」

アンブロとセルニアが言った。

そうかもね。

あの場にいたメンバーは全員、一見彼らがマフィアだなんて信じられなかったし。

「だけど、顔に騙されちゃいけない。彼らは『青薔薇連合会』の構成員なんだよ」

どんなに優しげな顔をしていようと、犯罪者であることに変わりはない。

ルレイア・ティシェリーに良いように操られ、言いなりになっているだけなのだとしても。

「犯罪者を許しちゃいけない。ましてや、帝国騎士団から国民のお金を盗み、皇太子を人質にしている連中を」

「勿論だよ。僕達が、『青薔薇連合会』を止めよう」

そうだね。私達が『青薔薇連合会』を止めなきゃ。

帝国騎士団が動かないなら、私達帝国自警団がやる。

それが、帝国自警団という組織の存在意義だから。

「ブロテちゃん…。この後はどうするの?犯罪の証拠は見つけられなかったんだよね?」

と、マリアーネが尋ねた。

出来れば、今回の立ち入り調査で『青薔薇連合会』の後ろ暗いところを掴み、そのまま彼らを捕まえたかったんだけど…。

生憎、そこまで馬鹿じゃなかったみたいだから。

今すぐ『青薔薇連合会』に令状を出し、強制捜査に移行する…ことは無理そうだ。

でも、諦めはしない。

「大丈夫だよ。一回やって駄目なら、二回三回と回数を重ねれば良いだけ」

「それじゃ…また立ち入り調査を?」

「それも良いけど、でも多分、この段階で立ち入り調査を続けたとしても…出てくるものは何もないだろうね」

今回の立ち入り調査は、ほぼ抜き打ち検査だった。

『青薔薇連合会』に、対策する間も与えずに踏み込むつもりだった。

でも、その作戦は失敗に終わった。

今頃『青薔薇連合会』は、私達がいつ再度立ち入り調査をしても困らないよう、充分に対策をしていることだろう。

何度立ち入り調査をしても、出てくるものは何もないはず。

だったら…。

「今度は別のアプローチから、『青薔薇連合会』を…ルレイア・ティシェリーのことを探っていこう」

「探るって…どうやって?」

「やりようはあるはずだよ」

この10年の間で、帝国自警団の威光は落ちぶれたかもしれない。

でも、私達の持つ権限まで、なくなってしまった訳じゃない。

使えるものは、何でも使おう。
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