The previous night of the world revolution~P.D.~
…全くさぁ…。

俺は一人物思いに耽って、考えをまとめようと思ってたのに…。

そういう気遣いとか、全くなし。

容赦なく扉をこじ開けられ、容赦なく着ているものまで奪い取られ。

気がついたら、俺は謎の黒いTシャツを着せられていた。

…今更だけど、これは何のTシャツなんだ?

しかもよく見たら、このTシャツ…。

「…『frontier』のコラボTシャツか?これ」

「はい!新作なんですよ。素敵でしょう?」

あぁ、道理で…若者っぽいと言うか、妙に洒落たデザインなんだな?

「しかもこれ、『frontier』の各メンバーをイメージしていまして、メンバーごとにそれぞれデザインとカラーが違うんですよ」

あ、そうなのか?

そういや、それぞれ色味がちょっとずつ違うよな。

ベースは全員黒なんだけど、ちょっと赤みがかってたり紫がかってたり…。

「ルルシーのはルクシーデザインで、ちょっと青っぽい黒なんです」

俺が着てるのは、『frontier』のサブボーカルである、ルクシーデザインのTシャツらしい。

成程、メンバーそれぞれのイメージカラーって奴か?

「ちなみに、他の奴は?アリューシャのは誰だ?」

「アリューシャが着てんのは、エル公デザインなんだぜ」

エル公っていうのは、多分『frontier』のドラム、エルーシアのことだろうな。

お前な、仮にも有名人をそんな、知り合いみたいなニックネームで。

エルーシアデザインは、ちょっと赤みがかった黒だった。

「アイズのは…?」

「私のはミヤノデザインだよ。上品だよね、グレーっぽい黒で」

言われてみれば。

ミヤノは確か、メンバーのリーダーである同時に、『frontier』の中で一番年上なんだっけ。

それで、そんな落ち着いたシックな色なんだな。

「シュノのTシャツは…それはいつもの、あの女性メンバーのデザインか?」

「うん、そう。ベーシュちゃんデザイン」

と、シュノは嬉しそうに言った。

シュノがこれだけ嬉しそうにしてるってことは、多分ルレイアに勧められたんだろうな。

紫がかった黒のTシャツは、『frontier』唯一の女性メンバー、ギター担当ベアトリーシュのデザイン。

シュノによく似合っている。

少なくとも、国旗か、床屋のぐるぐるしてるアレみたいな服ばかり着ていた頃のシュノに比べれば、随分進歩している。

だからって、シュノまでゴスロリに目覚めるのは行き過ぎだがな。

それもこれもルレイアのせいだ。シュノにゴスロリ教を布教したルレイアの罪は重い。

…で、そっちの二人は…。

「ルリシヤとルーチェス…お前達のは?なんか銀色っぽいけど…」

「シルバーブラックって言うんですよ」

ふーん。そんな色なのか。

「それは誰のデザインなんだ?ルトリア?」

残るメンバーは、ボーカルのルトリアだけだよな?

しかし。

「これは特定のメンバーのデザインではなく、限定生産カラーだ」

「予約してないと手に入らない、レアカラーなんですよ」

「あ、そう…」

各メンバーのデザインとは別に、限定生産デザインを売るとは。

ボロい商売してんな。

限定と言われると欲しくなる、人の習性を利用している。

シルバーと言われると、何だか格好良く聞こえるしな。

じゃあ、最後に残るルトリアデザインのTシャツは…。

「ルレイアが着てるのが、ルトリアデザインか」

「ルルシー、ご明察!」

満面笑みで頷くルレイア。

まぁ、大体予想はついてたよ。
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