The previous night of the world revolution~P.D.~
「あいつらって、確か活動休止してなかった?」

ルレイア達が『frontier』にハマり出したのは、元はと言えば。

『ポテサラーズ』の片割れ…メークインだか男爵だかが、病気療養の為に活動休止を宣言し。

その代わり…じゃないが、それがきっかけで、ルレイアは別のアーティスト…『frontier』…に鞍替えしたんだよな。

今となっては、『ポテサラーズ』より『frontier』の方が有名になってきたよな。

流行り廃りってのは早いもんだ。

「えぇ。でも今ではとっくに、活動再開してますよ?」

「そうなのか…」

「まぁ、今では俺のプロデュース力のお陰で、『frontier』の方が人気になってますけどね〜」

お前のお陰ではないだろ。

『frontier』の努力の賜物だ。

なんてルレイアに言ったら、きゃんきゃん怒るに決まってるから言わないけど。

「実は『frontier』の皆さんも、『ポテサラーズ』に憧れてバンド活動を始めたという経緯があるそうで」

「え。そうなのか」

「はい。『frontier』が最初にyourtubeにアップした、記念すべき最初の動画は、『ポテサラーズ』の歌ってみた動画なんですよ」

そんな活動秘話が。

自分達が憧れてバンド活動を始めたアーティストと、今回同じ舞台に立って、一緒に歌うことになるとは。

そりゃまた、『frontier』の感慨もひとしおという奴だな。

きっと喜んでいることだろう。

「他にも、若者に人気の豪華アーティストを揃えてますからね。それに伴って、各種コラボグッズも揃えています」

「Tシャツだけじゃないのか」

「勿論ですよ。Tシャツのみならず、タオル、パーカー、トートバッグ、ストラップ、アクリルスタンド、マグカップ、缶バッジ等々、他にもまだまだたくさんありますよ」

本当お前、ボロい商売してんな。

「枚数限定、サインポスター付きCDもありますよ」

ファンにとっては、喉から手が出るほどの一品。

「しかも、夏フェスは三日間に渡って行われるんですが、中には日替わりでデザインが異なるグッズも販売するんです」

「何?一日だけじゃないのか」

「えぇ、会場は三日間借り上げました」

そりゃまた…随分張り切ったな。

莫大な広告費を注ぎ込んだ訳だ。

しかも、日替わりでデザインが異なるグッズとは。

コンプ勢に、三日間毎日買わせるつもりだな?

「最終日の夜には、特設ステージにて『frontier』特別ライブも開催されます。いやぁ、楽しみですね〜」

「アリューシャもそれ行く!アイ公、連れてって!」

「勿論だよ、アリューシャ。一緒に行こうね」

アリューシャとアイズは、行く気満々。

ライブくらい、保護者なしでも一人で行けるようになれよ、馬鹿アリューシャ。

「私も。ナマでベーシュちゃん見たい…!」

『frontier』の女性メンバー、ベアトリーシュに憧れを抱いているらしいシュノ。

動画やブロマイドじゃなく、本物を見られる機会ということで、こちらもわくわくしている。

「ここ最近、ルティス帝国は暗いニュースばかりだったからな。この夏フェスは、日頃の憂さを晴らす良い機会になるだろう」

「ですよね〜!僕もセカイお姉ちゃんと一緒に行くんですよ。今のうちに、推しうちわ作っておかないと」

ルリシヤとルーチェスも、この反応。

ルーチェスは元皇太子だった癖に、何で『frontier』に詳しいんだ…?

「ルルシーも俺と一緒に行きましょうね」

と、ルレイアは俺の手を握って言った。

…は?

「プロデューサー特権で、ルルシーの為に特別席を確保してありますから」

お前、それは権力の濫用と言うんだぞ。

…いや、そんなことより。

「楽しみですね〜、夏フェス」

「本当ね」

「早く来ねーかな〜」

「そう焦るな。もうすぐだ」

…皆浮かれに浮かれていて、思わず俺も忘れかけていたが。

…今、それどころじゃないだろ。
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