The previous night of the world revolution~P.D.~
「…ふざけんな、ルレイア。俺は行かない」

「えっ」

えっじゃないんだよ。

俺は何で、こんなふざけたTシャツまで着せられてるんだ?

冗談じゃない。

するとルレイアは、何を思ったか。

「あ、そうか…。特別席じゃなくて、舞台袖から見たいですか?良いですよ。じゃあ許可証をもらっ、」

「違う馬鹿。そうじゃない」

何処からライブを見るかなんて、そんなことはどうでも良い。

「そもそも、夏フェスには行かないって言ってるんだ」

「え、何で?生理と重なります?」

ぶっ飛ばすぞお前。

ふざけて良い状況じゃないだろ。

「今!それどころじゃないだろ?状況が分かってるか?」

「状況?はい。夏フェスが近いです」

成程、そんなに俺を怒らせたいんだな。

俺は固く拳を握り締め、ルレイアの脳天に一発入れようとした…のだが。

「あぶなっ」

さすがは元帝国騎士団四番隊隊長。

持ち前の反射神経の高さを披露し、バク宙で回避した。

普通に避けろよ。

「ルレイア、格好良い…!」

「アイ公!あれアリューシャもやる!」

「アリューシャは危ないから、やめておこうね」

そんなルレイアを、アリューシャとシュノが羨望の眼差しで見つめていた。

お前らがおだてるから、ルレイアが避けばっかりするんだよ。

たまには一発くらい殴らせてくれ。頼むから。

俺の頭痛が悪化の一途。

何なら頭痛とセットで、胃痛もついてきそうだ。

「何するんですか、ルルシー」

何するんですかじゃないだろ。

「ルルシー先輩、夫婦喧嘩は良くないぞ」

「そうですよ。ましてや暴力なんて。僕の家でも夫婦喧嘩はしますが、大抵くすぐり合って終わりますよ」

ルリシヤとルーチェスが言った。

ルーチェスの家のそれは、夫婦喧嘩と呼べるのか?

ただ乳繰り合ってるだけだろ。ノロケやがって。

そんなこともどうでも良いんだよ。

「帝国自警団だよ」

と、俺は言った。

今、それ以外に考えるべきことがあるか?

「忘れてるんじゃないだろうな?あいつらは今頃、俺達に…ルレイアに手錠をかける口実を探してるんだぞ」

あいつらがいつ、また徒党を組んで『青薔薇連合会』にやって来るか分からない。

しかも今度は、この間のような任意捜査ではなく。

強制捜査に切り替わっていて、有無を言わせず捕まる可能性だってあるのだ。

それなのに何だってお前らは、夏フェスなんぞにうつつを抜かしている余裕があるのだ。

その夏フェスの日を迎える前に、ブタ箱に閉じ込められている恐れもあるのに。

考えなしにも程があるだろう。

俺みたいに、絶えず頭痛に悩まされて戦々恐々としてろ、とまでは言わないが。

多少の危機感くらいは、持っていて欲しいんだが?

「ルルシーったら、また心配性ですか?」

と、呆れたような顔のルレイア。

ぶちっ。

お前があまりにも楽観的過ぎるから、代わりに俺が危機感を抱いてるんだろうが。
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