The previous night of the world revolution~P.D.~
今日ばかりは、俺もガツンと言わせてもらうぞ。

「ルレイア、お前が一番危機感を持ってなきゃいけないんだぞ。分かってるか?」

分かってないようだから言ってるんだぞ。

「自警団の奴らは、明らかにお前を警戒してた。お前が一番狙われてるんだ。…何でかは知らないが」

「…」

まぁ、お前はあちこちに敵を作ってるからな。

そりゃ狙われもするだろう。目もつけられるだろう。

だからこそルレイアは、常に危機感を持って行動しなければならない立場のはずなのだ。

断じて、夏フェスなんぞにうつつを抜かしていて良い立場ではない。

「危ないんだぞ。危機感を持て。次に帝国自警団がどう動くかを予測して…」

「で、自警団に怯えて挙動不審になって、思わずボロを出してしまう…ですか?」

…え?

ルレイアは、先程とは打って変わって真面目な顔だった。

そんな真面目な顔をされると、俺も言葉に困る。

「今の状況なら、俺だって分かってますよ。自分が帝国自警団に狙われてることも。…何でかは知りませんが」

「…それは…」

「でも、だからこそ普通に…いつも通り過ごさなきゃならないんじゃないですか。今ここで挙動不審になったら、何かを隠してるんじゃないかと疑われるだけです」

…!

俺は、思わずはっとしてしまった。

「俺達には何も疚しいことはない。探られて困ることもない。弱みを見せればつけこまれるだけです。びくびくするより、堂々としていた方が良い」

「…ルレイア…」

お前…そんなことを考えて…。

ルレイアも…あながち、考えなしに浮かれているだけじゃなかったのか。

…それは…悪かった。

ルレイアはルレイアなりに、ちゃんとかんがえ、

「まぁ、夏フェス楽しみにしてたんで、何が何でも参加したかったんですけど」

「…」

ごめん、前言撤回するわ。

やっぱり考えてないんじゃないかよ。

…まぁ、でも…ルレイアの言う通りかもな。

ここで俺達がみっともなく右往左往してれば、帝国自警団に良いように付け入られるだけ。

それなら、いっそ堂々としていた方が…つけいる隙を与えずに済む、か?

…どうなんだ?それって。

むしろ、お前ら立ち入り調査まで受けたのに悪びれもせず、と逆上されるのでは?

どう振る舞うのが正しいのか分からない。

ただ、呑気に『frontier』の夏フェスを楽しんでいて良いはずがないのは確かだ。

…それなのに。

「楽しみですね〜夏フェス」

「推しグッズ用意しとかないといけませんね。セカイお姉ちゃんの分も!」

「俺も当日の為に、夏限定の仮面を新調しようと思う」

…何だよ。夏限定仮面って。

お前らと来たら…本当に呑気で…。

「…はぁ…」

浮かれに浮かれているルレイア達に、激怒しようとしても…最早、怒りすら湧いてこなくて。

俺は思わず、深々と溜め息を溢したのだった。

すると、アイズがフォローするかのように。

「大丈夫だよ、ルルシー。どーんと構えていこうよ。どーんとね」

微笑んでそう言った。

…どーんとね…。

「…分かったよ…」

それでどうにかなるとは、とても思えないが。

俺一人が狼狽えていても、何にもならないということはよく分かったよ。

だったらせめて…夏フェスとやらでルレイア達が浮かれ過ぎないよう、俺が傍で見張っておくとしよう。
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