ひとりぼっちのさくらんぼ
『どんでん返しにやられる、圧巻のミステリー!』
『これを読んで笑わない人なんていない!作家渾身の笑えるエッセイ集』
『どの話も同じ作家が書いています。ジャンルにとらわれない、不思議な世界が広がる短編集』
(へぇ、面白そう……)
どれか借りてみようかな。
その時。
あたしは見つけた。
『孤独な主人公に共感。そっと寄り添ってくれるみたいなリアルなラブストーリー』
その紹介文を読んで、「これだ」と思った。
カードに書かれている小説のタイトル。
作家名。
本棚の番号を覚えて。
あたしはその場を離れた。
小説のタイトルは『孤独な月をあなたにあげる』。
本棚に並んでいるこの本の背表紙を見た時。
本があたしに、何かを訴えかけている気がして。
手に取らずにはいられなかったんだ。
あたしは図書カウンターまで引き返して。
図書委員の人に本を渡す。
図書委員の男子は、
「えっ」
と驚いた顔をした。