ひとりぼっちのさくらんぼ

「そしたら、帰れる?」



お姉さんを助けて。

ここに来た目的を果たしたら。



「あたし、平成に帰れるかも」






二時間ほど経って。

お姉さんがリビングに戻って来た。

まっすぐにキッチンへ向かって、
「J Kちゃん、私、何か食べるね」
と、冷蔵庫を開ける。



「うん。わかった」



あたしもキッチンへ行く。

お姉さんは使いかけの、ラップにくるまれた玉ねぎを手に取り、皮をむき始めた。



包丁でそれを薄く切って、一旦まな板に置いている。

油をひいた小鍋に合挽きミンチを入れる。

しばらく炒めて、さっき切った玉ねぎを加えてまた炒めている。



「何を作っているの?」

「んー?肉じゃがじゃないけど、それっぽいおかず」

「それって、『肉じゃがもどき』?」

「そう、それ。お母さんがたまに作ってたよね」



お姉さんはじゃがいもの皮をむいて、ひと口大に切った。

電子レンジで温めてから、小鍋に加えて、また炒めている。



「味付けして、少し煮込んだら終わり」



お姉さんはそう言って、冷蔵庫をまた開けた。

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