ひとりぼっちのさくらんぼ

「何にもないな」



そう言ったお姉さんは、戸棚から何かを取り出して、お湯を沸かし始めた。

お茶碗にご飯をよそって。

沸いたお湯でインスタントのお味噌汁を作って、
「よし、食べる!」
と、リビングのローテーブルに運ぶ。



「いただきます」と、両手を合わせて食べ始めたお姉さんに、
「ねぇ、市原さんのこと、まだずっと好き?」
と、あたしは尋ねた。



「え、何、急だなぁ」



お姉さんの頬が少し赤くなる。



「ねぇ、あたしさ、考えたんだ。ここに来た理由」

「え?」

「お姉さんの恋を成就させてさ、あたし、平成に帰るよ」



市原さんとお姉さんが両想いになれば。

お姉さんはひとりぼっちじゃなくなる。

つらくなくなる。



「J Kちゃん、そんなことしなくていいよ。あなたがどうしたら平成に帰れるのか、きちんと考えてよ」

「え?」

「方法ってこと。どうしたらタイムスリップ出来るかってこと」

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