ひとりぼっちのさくらんぼ

その音が。

お姉さんの心臓の音みたいに。

生きている証みたいに思えて。






「タイムスリップする方法……」



あたしはリビングの床に座って。

ローテーブルに頬杖(ほおづえ)をついた。

もちろん、感覚はない。

支えが無いまま、頬杖をつくって。

こんなに筋力のいることなんだな、とバカみたいに素直に思った。




「事故に遭って、今、タイムスリップしてる……」



場所とか関係するのかな。

事故現場に行けば、何かわかる?



あたしはリビングから出るために、ガラス戸を通り抜けた。

通り抜ける時は、やっぱり怖かったけれど。

ドアノブには触れられないから、仕方ない。



お姉さんの仕事部屋の前。

ドアはノック出来ないと思って。



「お姉さん」
と、声をかけた。



「何?どうしたの?」



ドアの向こうからお姉さんの声。



「あたし、出かけてくるね」

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