ひとりぼっちのさくらんぼ
「え?どこに?」
お姉さんはドアを開けて、顔を見せてくれた。
昨日はふたりでわんわん泣いたから、ほんの少し目が腫れている。
……まぁ、あたしもそれは同じだけど。
「事故現場に行ってくる。何かわかるかも」
あたしがそう言うと、
「ちょっと待ってて。私も行くよ」
と、お姉さんが部屋の奥に一旦引っ込んだ。
「いいよ、忙しいだろうから」
と、声をかけたけれど、
「だめだよ。あなた、今の街を知らないんだもん。迷子になるよ」
なんて、お姉さんは言う。
「迷子……、あ、あたし携帯電話は持ってるよ」
あたしは制服のポケットに手を突っ込む。
(あれ?)
ポケットの中に、携帯電話を入れておかなかったっけ?
「……携帯電話が、無い」
お姉さんにそう言うと、
「多分、タイムスリップしたのは、あなたの意識だけなんじゃない?」
と、お姉さんが言った。