ひとりぼっちのさくらんぼ

「意識だけ?」

「そう。今まで考えてたんだけど、それだと説明がつくじゃない?」



お姉さんはあたしの肩に軽く両手を置いた。



「私はあなたに触れることが出来る。あなたも私には触れることが出来る」

「うん、そうだね」

「でも、あなたは他の物には触れられない」

「感覚も無いよ」



お姉さんは無言でうなずく。



「鞄も、携帯電話も、何にもここにはあなたの時代の物はない。あなただけが、タイムスリップしたんだよ。きっと、体……、肉体っていうの?それすら置いてきちゃったんだよ、多分」

「え……」



(そうなの?で、でもさ、それだと……)



「お姉さんに触れられることが、矛盾してない?あたしの肉体は無いのに」

「わからないけれど、あなたは私だから。私自身だから、あなたの意識に私は触れることが出来るのかもしれないよ」



お姉さんはそう言いつつ、あたしから離れて、手短かに身支度を整えた。

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