ひとりぼっちのさくらんぼ

電車に乗って、県立A高校の最寄り駅までやって来た。



「確か、この交差点だったよね?」



お姉さんは横断歩道の前で止まる。



あたしはうなずき、
「事故現場だね、まさに」
と、道路を見た。



「ね、お姉さん」



あたしの声が緊張してる。



「何?」

「事故に遭って、タイムスリップしたならさ……」



あたしは口の中が渇いてきた気がした。



「……もう一度事故に遭えば、またタイムスリップして帰れそうじゃない?」



車がよく通る道路。

あたしは横断歩道の信号機を見つめた。



今は、青信号。

車が止まっている。



「ダメだよ」



お姉さんが静かに言う。



「J Kちゃん、事故に遭うなんて言わないで。意識だけだとしても、危ないから」

「でも、でもさ……、意識だけだから大丈夫かも」


あたしの言葉に、お姉さんは怖い顔をした。



「ダメ!お願いだから、やめて!」



大きな声を出したお姉さんに、通行人の視線が集まる。



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