ひとりぼっちのさくらんぼ

「……ごめん」
と、あたしは素直に謝った。



お姉さんを見ていた人達は、ひとりで大声を出しているように見えるお姉さんと関わりたくないと思ったのか、また素知らぬ顔をして歩き出した。



「J Kちゃん、お願い、こっちに来て」
と、お姉さんが手招きする。



あたしはお姉さんに近寄って、
「お姉さん、ひとりで話しているように見えるから……」
と、注意したけれど、
「いいの、そんなの」
お姉さんは構わず、あたしを抱きしめた。






結局。

事故現場に来ても、何もわからなかった。

だけど。

あたしはこっそりと、考えていた。



(どうやったら、事故に遭えるかな)



思えば、あたしには実体が無い。

ガラス戸だって、通り抜けるんだもん。

車の前に立ったとしても、きっと衝撃を感じない。



衝撃が無ければ。

タイムスリップ出来ない気がする。

……強い力で。

あたしはここに来たはず。

< 117 / 224 >

この作品をシェア

pagetop