ひとりぼっちのさくらんぼ

「わっかんない。なんでだろ!?でも、ほら。あたし、ブランケットを掴んでる!!」



興奮しつつ、あたしはお姉さんにブランケットを持った手を見せた。



ふたりで「すごい、すごい!」と騒いで。

すっかり眠気なんか飛んでいったけれど。



「じゃあ、私も寝室に行くよ。おやすみ、J Kちゃん」
と、お姉さんがリビングから出て行った。



暗くなった部屋。

ローテーブルの上に、お姉さんがスマートフォンを忘れて行った。

あたしの制服のリボンの隣で、静かに振動している。



(届けてあげよう)



そう思って。

あたしはお姉さんのスマートフォンを持ち上げようとした。



「!?」



手に感覚が無い。

スマートフォンを持ち上げることなんて出来なくて。

あたしの手はまた、透き通っているみたいに、スマートフォンを通り抜けた。



「なんで?だって、さっき……!」



あたしはソファーの上を見る。

ブランケットがぺたんこになって、そこにある。

< 126 / 224 >

この作品をシェア

pagetop