ひとりぼっちのさくらんぼ
「ルール?何の?」
あたしはお姉さんの顔をじっと見つめる。
お姉さんの眉間には、深いシワが寄っている。
「……わからないけれど。でも、でもさ。ルールがあるんだと思うの。あなたが、この世界に存在することに対して」
「あたしが、存在すること?」
お姉さんはうなずいて、
「そう。あなたは不自然でしょ?この令和元年で存在していることが。だって、私がいるんだもん」
と、あたしと自分を交互に指差した。
「……そうだね。確かに。『不自然』とか言われると、正直気分悪いけど」
チクリと本音も伝えるあたしに、お姉さんは「ごめん、ごめん」と、少しだけ笑顔になる。
「でも、ルールを見つけたいよね」
お姉さんはそう言って、マグカップに砂糖を入れて、スプーンでかき混ぜた。
「物に触れられるルール……、あたしが実体を持てるルールってことだよね?」
「そうね、そういうことになると思う」