ひとりぼっちのさくらんぼ
「恋人がいるのに……、優しくされたら、私、勘違いしちゃうから」
「ん?オレ?オレの話?」
市原さんは焦ったり慌てたりする様子はなく、だけど、頭の上にクエスチョンマークが付いている。
あたしはお姉さんの腕を揺すって、
「本当なの?心当たりが無さそうだよ?」
と、市原さんを見る。
「市原さんのSNSの投稿を見つけて……。でもその中のコメントの書き込み欄で、恋人みたいな人からのメッセージがあって」
市原さんはピンときたのか、
「コレ?このコメント?」
と、自分のスマートフォンを操作して、お姉さんに見せた。
《今日も楽しかったね。朝日くんとのデートはいつも楽しいし、いっつも幸せだよ》
「……そう、その人です」
と、お姉さんはうなずく。
市原さんは、
「オレ、この人のことを知らないんだ」
と言う。
「去年くらいからこういった書き込みがあるんだけど、デートなんてしていないし、そもそもどこの誰かも知らないんだ」
「え?」