ひとりぼっちのさくらんぼ

市原さんは、
「うん」
と、静かにうなずいた。



それから少し頬を赤らめて、
「嬉しいよ」
と、笑った。







ふたりはそのあと、少し町を散歩した。

ただブラブラ歩いては、木にとまっている鳥を見たり、どこかの家の庭の植物を愛でたりしている。



(なんか、恋人同士のデートっていう感じじゃないな)



どっちかと言えば、夫婦の散歩って感じかな?

きゃっきゃっしていないふたりを見て、あたしはほんの少しの物足りなさを感じたけれど。

だけど、やっぱりうらやましくもあった。



落ち着いたふたりを見ていて、いいなぁって思った。



あたしに、こんな未来が待っているなんて。

幸せだなって。






駅で市原さんと別れて、あたしとお姉さんは家に帰って来た。



「なーんか、両想いだったね?」
と、あたし。



リビングのソファーにお姉さんと並んで座る。



「……うん。実ったね?」

「実ったよ、お姉さん」

「……失恋すると思ってた」



お姉さんはそう呟いて、呆然としている。

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