ひとりぼっちのさくらんぼ
第四章
第一話
お姉さんは市原さんとの時間を重ねていった。
夜になると電話をしているし、メッセージのやりとりもしているみたい。
……もちろん、あたしは内容を聞いてはいないけれど。
週末にはデートをしている。
この間はふたりで動物園に行ったらしい。
動物に触れるふれあい広場が楽しかったと、お姉さんが嬉しそうに話してくれた。
ウサギのコーナーが一番気になったけれど、順番待ちの列が長かったので、諦めたことも教えてくれる。
ふたりのデートに、あたしはついて行かないことにしていた。
たとえ自分自身であろうとも、気まずい。
それに市原さんにも失礼かなって思って。
お姉さんがデートに行っている間、あたしは帰る方法を考えている。
もうお姉さんはひとりぼっちじゃないのに。
あたしには何の変化もない。
目を閉じて「平成に帰る!」と念じてみても、目を開ければ、まだ令和元年にいる。
帰る方法がわからない。
事故に遭ってこの時代にやって来たから、いつか考えたみたいに、また事故に遭わなくちゃ帰ることが出来ないのかもしれない。