ひとりぼっちのさくらんぼ
でも、その場合、どうやって事故に遭うか。
きちんと考えなくちゃいけない。
あたしの持ち物をお姉さんに持ってもらったら、あたしは実体を持って、怖いけれど、事故に遭うことは出来る。
でも、そんなこと、お姉さんが協力してくれるとは思えない。
……ガチャガチャ。
玄関の扉の鍵が開く音。
慌てた様子でお姉さんがリビングに入ってくる。
「おかえりー」
「J Kちゃん、ごめんっ」
「?」
お姉さんは両手を合わせてから、あたしをソファーから立たせた。
ぐいぐいと背中を押される。
「何、何?」
「仕事部屋に行ってて?」
「な、なんで?……あっ」
市原さんが来たんだとわかった。
「わかった、仕事部屋にいるから。あたしのことはあんまり気にしないで」
進んで仕事部屋に入ると、お姉さんが部屋のドアを閉める。
お姉さんは再び玄関を開けて、市原さんを招き入れた。
「お邪魔します」
市原さんの穏やかな声。
あたし、この人の声が好きだなって思った。