ひとりぼっちのさくらんぼ
「散らかってるけど……」
お姉さんが緊張した声を出す。
市原さんが「あははっ」と笑って、
「急にごめんね」
と言った。
仕事部屋のデスクに座ることにしたあたしは、将来、こんな感じで文章を書いていくんだと思うと、ワクワクした。
静かな部屋。
だけど思いの外、壁が薄いことがわかった。
せっかく移動したけれど、お姉さんと市原さんの会話が丸聞こえだった。
「市原くんのSNSには、可愛い鳥がいっぱい写ってるね」
「うん。可愛いでしょ?」
「すずめの写真が多いけれど、すずめが好きなの?」
「あー、うん。なんか、恥ずかしいね」
和やかな会話。
時々笑い声も聞こえてくる。
「……でも、まだあるね。あの書き込み」
お姉さんが心配そうな声を出した。
「うん。教えてあげたほうがいいのかな?人違いですよって」
「でも、コンタクト取るのも……ちょっと怖い、かも?」