ひとりぼっちのさくらんぼ

「散らかってるけど……」



お姉さんが緊張した声を出す。

市原さんが「あははっ」と笑って、
「急にごめんね」
と言った。



仕事部屋のデスクに座ることにしたあたしは、将来、こんな感じで文章を書いていくんだと思うと、ワクワクした。

静かな部屋。

だけど思いの外、壁が薄いことがわかった。



せっかく移動したけれど、お姉さんと市原さんの会話が丸聞こえだった。



「市原くんのSNSには、可愛い鳥がいっぱい写ってるね」

「うん。可愛いでしょ?」

「すずめの写真が多いけれど、すずめが好きなの?」

「あー、うん。なんか、恥ずかしいね」



和やかな会話。

時々笑い声も聞こえてくる。



「……でも、まだあるね。あの書き込み」



お姉さんが心配そうな声を出した。



「うん。教えてあげたほうがいいのかな?人違いですよって」

「でも、コンタクト取るのも……ちょっと怖い、かも?」

< 165 / 224 >

この作品をシェア

pagetop