ひとりぼっちのさくらんぼ
気づけばあたし、最近高田くんのことを考えていないなって思った。
そう思ったら、なんだか寂しかった。
本当に訪れた気がしたから。
恋心の終わりが。
お姉さんと市原さんが、ずっと幸せならいいのに。
恋心がずっと続けばいいのに。
ソファーに寝転がって、あたしはもう見慣れた天井を見つめた。
知らない時代に、ひとりぼっちの気持ちになった。
朝。
市原さんが起きてきた。
きちんと洋服を着ているけれど、前髪だけがピョンとハネている。
(寝癖だな)
キッチンへ向かって、何かを探しているみたいだった。
そこへお姉さんが起きてきて、
「パンとごはん、どっちがいい?」
と、市原さんが聞いている。
お姉さんは、
「パン」
と言ってから、
「私、用意するよ」
と、笑った。
それからお姉さんは市原さんをじっと見て、
「前髪」
と、幸せそうな顔をする。