ひとりぼっちのさくらんぼ

気づけばあたし、最近高田くんのことを考えていないなって思った。

そう思ったら、なんだか寂しかった。



本当に訪れた気がしたから。

恋心の終わりが。






お姉さんと市原さんが、ずっと幸せならいいのに。


恋心がずっと続けばいいのに。





ソファーに寝転がって、あたしはもう見慣れた天井を見つめた。



知らない時代に、ひとりぼっちの気持ちになった。










朝。

市原さんが起きてきた。

きちんと洋服を着ているけれど、前髪だけがピョンとハネている。



(寝癖だな)



キッチンへ向かって、何かを探しているみたいだった。

そこへお姉さんが起きてきて、
「パンとごはん、どっちがいい?」
と、市原さんが聞いている。



お姉さんは、
「パン」
と言ってから、
「私、用意するよ」
と、笑った。



それからお姉さんは市原さんをじっと見て、
「前髪」
と、幸せそうな顔をする。


< 169 / 224 >

この作品をシェア

pagetop