ひとりぼっちのさくらんぼ
第二話
数日が経って。
いつものように、お姉さんは仕事部屋で執筆をしている。
今はどんな内容を書いているの?と尋ねたら、
「J Kちゃんには、内緒ー」
と、おしえてくれなかった。
「ケチー!」と憎まれ口をたたくと、お姉さんは笑って、
「別に教えても支障はないんだけどね。あなた、平成に帰ったら、タイムスリップの記憶って消えるから」
と、言った。
あたしはリビングのソファーに座って、考えていた。
タイムスリップしている、今の記憶。
平成に持って帰れないんだ。
この時代に流行るファッションのことも。
新しく覚えた言葉も。
お姉さんと観たテレビ。
笑い合ったこととか。
協力したこと。
市原さんとのことも。
あたし、全部忘れちゃうんだ?
平成に帰ったら。
あたし、また孤独なんだ。