ひとりぼっちのさくらんぼ

第二話


数日が経って。



いつものように、お姉さんは仕事部屋で執筆をしている。



今はどんな内容を書いているの?と尋ねたら、
「J Kちゃんには、内緒ー」
と、おしえてくれなかった。



「ケチー!」と憎まれ口をたたくと、お姉さんは笑って、
「別に教えても支障はないんだけどね。あなた、平成に帰ったら、タイムスリップの記憶って消えるから」
と、言った。



あたしはリビングのソファーに座って、考えていた。

タイムスリップしている、今の記憶。

平成に持って帰れないんだ。



この時代に流行るファッションのことも。

新しく覚えた言葉も。

お姉さんと観たテレビ。

笑い合ったこととか。

協力したこと。

市原さんとのことも。



あたし、全部忘れちゃうんだ?






平成に帰ったら。

あたし、また孤独なんだ。







< 173 / 224 >

この作品をシェア

pagetop