ひとりぼっちのさくらんぼ

「あれ?言ってなかったっけ?市原くん、大学は遠い所に行くの」



お姉さんはそう言って、
「あたしは実家から通える範囲で大学受験するけれど、市原くんは遠くの大学を受験したから」
と、キッチンに向かう。



冷蔵庫を開けて、中にあるものを確認している。

あたしもキッチンまで移動した。



「じゃあ、告白もしないまま、大学卒業してさー、社会人になって……」

「そうよ。それでこの間、やっと再会したってこと。去年、この街に帰って来たんだって。そんなこと、ちっとも知らなかったんだから」

「なんかわかんないけど、なっがーーー!!」

「え?」

「いや、なんかわかんないよ?でも、なんかなっがーーー!!って思う」



お姉さんは笑って、
「長いよ?あなた、覚悟してね」
と、言った。



お姉さんは冷凍庫からラップに包まれたお米を出してきて、電子レンジに入れた。



「今日、ごはん何?」
と、尋ねると、
「おにぎりとお味噌汁にしようかな。お漬物もあるし」
お姉さんのお腹が小さく鳴った。

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