ひとりぼっちのさくらんぼ
あたしは何となく察してリビングから出て行こうとしたけれど、
「ちょ、ちょっと待って」
と、お姉さんが言った。
それはあたしに言ったのか、市原さんに言ったのかはわからない。
だけど、あたしはリビングにとどまり、市原さんはキスをやめた。
「……市原くん、なんか変だよ。お願い、話して」
市原さんはちょっとしゅんとした。
(可愛い……っ)
と、思わず思ったのはあたしだけではなかったらしく、お姉さんの目も少しだけときめいている。
リビングのローテーブルの前。
市原さんは座って、お姉さんと向かい合う。
スマートフォンを取り出して、
「オレのSNSの投稿のページに、勘違いのコメントがあったでしょう?」
と、そのページを表示した。
「ここ最近、書き込みがひどくて。頻繁にくるし、内容も……こういう、あんまり読みたくない内容のものが多くて」
「何これ、ひどい……」
少し読んだお姉さんが思わず呟いた。