ひとりぼっちのさくらんぼ

市原さんのSNS。

きっと自分で撮った野鳥の写真と、野鳥の豆知識とか、野鳥への好きな気持ちが、優しい言葉で綴(つづ)られている。



「すずめだ。マジで市原さんってすずめが好きなんだね」

「すずめの写真の自然な感じ、良いよね」



お姉さんがスマートフォンを操作してくれるのを、あたしが横で見ている。



ふと、思った。

もしかしてあたしの持ち物をお姉さんがさわると、あたしが実体を持てるように。

あたし自身がお姉さんにさわっても、あたしは実体を持てるのかもしれない。



（そういえば実体が持てること、お姉さんに伝えたっけ？）



「あのさ、お姉さん……」

「ん？」



言いかけたけど、なんとなく言わないほうがいい気がしてきた。



今はあたしのことより、市原さんの問題だよね？




「……その書き込みって、どれ？」



あたしはスマートフォンの画面を見つめた。



「まだ読みやすいものから、いくよ？」



お姉さんが問題の書き込みを画面に出した。



《あんなに私のことを好きって言ってくれたのに、ひどいよね。朝日くんとは別れないよ》