ひとりぼっちのさくらんぼ
「確かに、まだ読みやすい」
あたしは素直な感想を伝える。
お姉さんは、
「これからだから」
と、画面を操作する。
続いて読んだ書き込みは、皮肉たっぷりの、卑猥な内容とも思える、不快な文章だった。
「どういうつもりで書いてるんだろう!?」
お姉さんの眉間にシワが寄る。
「……あたし思うんだけど、この人さ、脳内でもう、市原さんの恋人なんだよ。もしかしたら、奥さんのつもりかもしれない」
「奥さん!?」
「妄想だよ、これ。妄想の話を自分で書いて、本当のことみたいに錯覚しているんだと思う」
あたしは錯覚まではしていなかったけれど、でも、自分で書いた妄想が本当のことだったらなぁ、とは思っていた。
「なんでそんな……?」
「市原さんのこと、諦めるつもりがないからじゃない?」
「え?」
あたしはコホンと咳払いする。
「あくまで、あたしの考えだけど……」
と、前置きした。