ひとりぼっちのさくらんぼ
あたしは自分の人差し指で、自分のあご付近を指差した。
高田くんはそれを見て、ひとつ大きくうなずく。
「悪いんだけど、消しゴム貸してくれないかな。オレの、どっかに忘れてきたみたい」
高田くんはそう言ってニッコリと笑った。
唇の間から見えた歯が。
ものすごく白くてキレイ。
(歯磨き粉のコマーシャルに出られそう)
今まで話したことがなかったから知らなかったな。
「あの……、ごめん。消しゴム……」
ぼんやりするあたしに、高田くんはもう一度申し訳なさそうに言う。
あたしはハッと我に返って。
自分のペンケースの中から消しゴムを取り出した。
それとカッターナイフも。
大急ぎで消しゴムをカッターナイフで半分に切る。
「えっ、いいよ、貸してくれるだけで」
と、高田くんは遠慮しているけれど、あたしは無言でうなずき、切った消しゴムの半分を高田くんに差し出した。