ひとりぼっちのさくらんぼ

「ねぇ、これ見て」



お姉さんがスマートフォンを操作した。



「野鳥観察クラブの人だと思うんだけれど」
と、前置きをして見せてくれたのは、市原さんのSNSのある記事だった。



《今日も野鳥観察に来ています》
という文章と共に載っていた写真は、どこかの森で撮ったと思われる、市原さんと知らない女性のツーショットだった。



「この人……?」



見たこともない女性だった。

少し小太りな、ロングヘアの女性。

Vサインをしている手の先には、ゴールドのマニキュアが輝いている。



「ネイルが目立つ人だよね」
と、お姉さん。



「ね、ネイル?マニキュアのこと?」

「あ……、うん。そう」



お姉さんが何か言いたそうにして、思いとどまったことが伝わった。



(マニキュアも、もう言わないの?言葉ってすぐ変わるんだから)



こっそり毒づいていると、
「この人、別の日も市原くんと撮ってるの」
と、お姉さんが言う。

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