ひとりぼっちのさくらんぼ
高田くんは消しゴムを受け取り、
「ごめんね。でも助かる。ありがとう」
と、小さく頭を下げた。
あたしは首を振って、小声で返事をした。
「大丈夫だから気にしないで」
って。
それ以降は高田くんと話すことなく、丘先生の授業に集中した。
授業の終わり、丘先生はぶっきらぼうにこう言った。
「次の授業で小テストをします。点数が低い人には補習をしますので、皆さん、そのつもりでよろしくお願いします」
……小テスト!?
補習!?
教室がざわめく。
授業終了の合図のチャイムが鳴り、丘先生は足早に教室を去って行った。
(補習に呼ばれないように頑張らなきゃ)
教科書とノートを机の引き出しに片付けていると、
「上条さん」
と、呼ばれた。
高田くんだった。
イスに座ったまま、ほんの少し身を乗り出すようにあたしに向き直る。
「さっき、ありがとう。すっごく助かった」