ひとりぼっちのさくらんぼ

「上条さん、頼りになるなぁって」



市原さんはそう言って、
「ギャルしてた頃の上条さんを思い出したんだ」
と、懐かしそうに目を細めた。



(ギャル?あたし?)



「あの頃、たくさん遊んでいた時、オレたちは同学年だけど、上条さん、お姉さんみたいだったよね」

「え……、そ、そんなことないよ」



お姉さんが照れている。



あたしは、
(あたしが?)
と、不思議な気持ちになった。



市原さんと過ごす時間は。

あたしなりに頑張ったのかな。




「オレ、いっつも上条さんに手を引っ張ってもらっていたように思うよ」



市原さんは朗らかに笑って、
「だから、いつか。……いつか、オレが上条さんの手を引いて、でも一緒に歩けたらって思うよ」
と、言った。



「あの頃の上条さんにしてもらったみたいに」










お姉さんと市原さんはホームまで移動した。

土曜日の午前中だけど、これからデートに出かけるカップルや、家族連れで、ホームは賑わっている。


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