ひとりぼっちのさくらんぼ
「お姉さん、その人から離れて!!」
あたしはお姉さんに叫んだ。
この声。
この人は。
あのカフェの店員だ!
市原さんに、
『今日はおひとりじゃないんですね』
って声をかけた、あの店員だ!
女性店員は口元に笑みを残したまま、でも目はキッとお姉さんをにらんでいる。
そして、お姉さんに手を伸ばした。
「危ないっ!」
あたしはお姉さんと女性店員の間に割って入ったものの、女性店員の手はあたしを通って、お姉さんを押し倒した。
「お姉さんっ!」
お姉さんはその場に倒れこむ。
「邪魔しないでっ、私とカレは、きっと……絶対に、愛し合っているんだからっ」
女性店員は吐き捨てるように言う。
そして市原さんのもとへ歩き出した。
「お姉さんっ、大丈夫!?」
あたしはお姉さんを抱え起こす。
「大丈夫ですか?」
と、周りのカップルが聞いてきた。