ひとりぼっちのさくらんぼ
「べ、別に……。あたしは何も。消しゴム無いと大変そうだから」
そう答えていて、あたしは気がついた。
(あたし、クラスのひとと話すのって、もしかして初めて?)
色々と陰口とか、悪口は言われてきたけれど。
こんなふうに真っ直ぐ見つめられて。
『ありがとう』なんて言われる日が来るなんて。
ちょっと居心地が良いような、悪いような。
高田くんはニコニコ笑って、
「オレ、初めて話すかも。上条さんと」
と、言う。
「うん、そうだね」
あたしはうなずきつつ、次の授業の教科書を机の引き出しから取り出す。
次は確か、地学だったはず。
「また話そうな」
と、高田くんが席を立って、教室から出て行った。
初めて話した。
クラスの人と。
しかも、男子。
あたしは今更だけど、ドキドキしてくる。
『また話そうな』?
……次があるの?
また、次も話せるってこと?