ひとりぼっちのさくらんぼ
お姉さんはあたしの指差す方向を見た。
電光掲示板。
「なんで笑うのかわかんないけど、なんか引っかかる!」
あたしの言いたいことがわかったのか、お姉さんはじっと電光掲示板を見つめた。
《まもなく電車がホームへやって来ます》
電光掲示板に表示されている、そんな言葉が点滅し出した時。
「電車が来るっ!!」
お姉さんが叫んだ。
あたしはまだ何のことかわからずにいたけれど、女性店員があたしのすぐそばで、こう呟いた。
「……来世では、きっと絶対っ……!」
「市原くんっ!!」
とお姉さんが叫んで、市原さんのもとにかけ寄る。
あたしはそこでようやく気づいた。
(この人、今、市原さんのことを殺すつもりなんだ!)
女性店員は市原さんの胸のあたりに、勢いよくぶつかった。
体当たりした、と言ったほうが正確かもしれない。
市原さんは突き飛ばされて、バランスを崩して、ホームから落ちてしまう。