ひとりぼっちのさくらんぼ

「市原くんっ!!」

「市原さんっ!!」



あたしは考えるより先に、市原さんを追ってホームから飛び降りた。

気づいたら、お姉さんもあたしと同じ行動を起こしていた。




ホームから誰かの悲鳴が聞こえてくる。



「この女、男性を突き落としたぞっ」

「誰かっ!!助けてあげて!!」



そんな声が飛び交う中。



線路に降りたあたしとお姉さんは、市原さんのそばに寄る。

市原さんは落とされた衝撃で、頭を打ってしまったらしい。

頭から血を流している。



「市原くんっ、聞こえる!?」



お姉さんが呼んでも、市原さんは答えない。



「市原くん!!」



お姉さんが泣きそうになりながら、でも懸命に市原さんを呼び続けている。



ホームにアナウンスが流れる。



『まもなく二番線ホームに電車がやって参ります。お乗りの際はホームの黄色い線の内側に立って……』



「お姉さんっ!!電車が来る!!」



あたしはそう叫んで、
「市原さんを線路の外に出さないとっ!!」
と、市原さんの肩を持とうとした。

だけど、お姉さんと接触していないから、市原さんに触ることが出来ない。

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