ひとりぼっちのさくらんぼ
何かピシャリと言い返せば良かった。
あたし、結局「は?」くらいしか言ってない。
(自信があれば、言い返せたのに)
ため息を吐く。
だけど、高田くんのことを考えると、心が痛んだ。
(あたしのせいで悪く言われているのかな)
高田くんが隠れヤンキーなわけない。
これからグレるような気配だって、ない。
見ていたらわかるはずなのに。
ウワサって怖い。
その信憑性の薄さに、冷静な頭で気づいてほしい。
ウワサを広める快感に、溺れたりしないでほしい。
家に着いてみると。
キッチンでお母さんが夕食の準備をしていた。
「おかえり、絵玲奈」
「うん、ただいま」
あたしはそのまま二階にあがる。
自分の部屋で、今脱いだ制服を見つめていたら。
どうしようもない孤独がまとわりつく。
あたしは、何もしていないのに。
床に落ちた涙の雫を見て、余計に虚しくなった。