ひとりぼっちのさくらんぼ
あたしは無意識にごくり、と生唾を飲んでいた。
「早くふたりになりたかった……」
そう言った高田くんの声は。
いつもの爽やかな印象とは、遠くかけ離れていて。
その湿度のある、甘い声に。
あたしはドキッとした。
高田くんが誰かを抱きしめた。
そして、腕の力を緩めて。
誰かの顔をのぞきこむ。
その拍子に。
あたしのいる所から、誰かの顔が見えた。
(坂崎さん……!?)
学級委員の。
あの高くて。
威圧的な声。
(そうだよ。声に聞き覚えがあるはずじゃん)
あたしの苦手な声。
毎日、教室で聞いている声。
坂崎さんがふいにこっちを見た。
「!!」
目が合って、動揺するあたし。
でも。
坂崎さんはニヤリと笑った。
(え?)
その笑顔に。
なんとも言えない居心地の悪さを感じる。
(あたし、何やってるんだろう?)