ひとりぼっちのさくらんぼ
坂崎さんはそのまま高田くんに視線を戻して。
ゆっくり目を閉じる。
(あ、やだ。見たくない)
あたしは急いで回れ右して。
来た道を走って戻る。
走って。
走って。
公園から出た。
目の端からこぼれているものは。
あたしの涙なんだって気づかないフリをした。
あたしはこのモヤモヤした気持ちから逃げたかった。
爽やかじゃない高田くんの声。
聞きたくなかった。
『早くふたりになりたかった』
耳に自然とリピートされて、苦しくなる。
あたしじゃない誰かに。
あんなにそわそわして会いに行かないで。
あたしじゃない誰かに。
あんなこと、言わないで。
(あぁ、あたし……、好きだったんだ)
そうじゃないかな、とは思っていた。
心臓が騒いでいたのも。
ノートに妄想を書いていたのも。
あのふたりを見て、こんなに傷ついているのも。
あたし、高田くんのことが。
好きだからだよね?