ひとりぼっちのさくらんぼ

第四話


静かだな。

何の音もしていないみたい。






(あたし、死んだのかな)



どうせ死んじゃうなら。

もっといろんなことに挑戦すれば良かったかも。



習ってすぐやめたピアノとか。

興味はあったけれど、無理だと決めつけていたバレエとか。

クラスの人達ともっと話すとか。



それに、お父さんやお母さんと、もっと話しておけば良かったな。

高校入ってから、なんか変な雰囲気のままで。

ここで死ぬなら。

ちゃんと話せば良かったな。



変な雰囲気を取り払えるのは。

あたししかいなかったのに。





頬に、つぅっと涙が流れた。



(死んだ後でも、涙って流れるんだ?)



あたしは重いまぶたをゆっくり開ける。




知らない天井。

見覚えのない深緑色のソファーに、あたし、寝転んでいる。



体を起こして、ソファーに座る。

ふわふわしていて、感覚が無い。

座っているのに、自分の体の重みがすっぽり抜け落ちているみたい。

< 48 / 224 >

この作品をシェア

pagetop