ひとりぼっちのさくらんぼ

(あのドアの向こうは、いよいよ死者達の世界?)



そう思うと、背中に冷たいものが流れた気がする。



ふと、自分の足元を見ると。

ローファーを履いたままだったから。

あたしは慌てて靴を脱いで。

ソファーのそばに置いた。



どこかはわからないけれど、部屋の中で外靴を履いたままなのは、気が引ける。






その時。

ドアの向こう。






ガチャガチャ。






音がした!



(何!?)



怖くなってくる。



続いて、向こうのほうでキィッ、バタンと、かすかにドアが開いて閉まった音も聞こえる。



(このドアの奥にも、ドアがあるんだ?)



あたしはソファーから離れて。

キョロキョロと視線を動かした。



トットットッ。



近づいてくる足音。



咄嗟(とっさ)に、そばにあるローテーブルの上で何か武器になりそうな物を探していた。



(何かわからないけれど、身の危険を感じる!)



早鐘のような心臓。

死んでいるのに、心臓の音が聞こえるなんて変だなって、頭の片隅で考えたけれど。

あたしは、テレビか何かのリモコンに手を伸ばした。



でも。

スカスカと、あたしの手がまるで透き通っているみたいに。

リモコンを手に取ることが出来なかった。

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