ひとりぼっちのさくらんぼ
あたしは。
お父さんとお母さんを思い出した。
確かにギクシャクしていて。
最近はどこかよそよそしかった。
あたしの髪の毛や爪を見るたびに。
ふたりとも、ほんの少しの本音が表情に出ていて。
いつも。
あたし達、家族は。
同じ屋根の下。
家族を装っているみたいに感じた。
だけど、今。
思い浮かべたお父さんの顔も、お母さんの顔も。
(笑顔だ……)
ふたりは、やっぱりあたしの家族で。
あたしの、両親に変わりはなくて。
すぐにでも、ふたりに会いたいと思った。
「……」
「あなた、残念だけどね、ずっとひとりぼっちだから」
黙っているあたしに、お姉さんは口角を上げて、少し笑った。
寂しい笑顔だった。
(ひとりぼっち……)
そんな気がしていた。
だからそのことに対して、特別に驚きはしなかった。
でも。
そっかぁ、とは思った。
「そっかぁ」の中に、悲しみや寂しさはひっそりだけど、確かに存在していた。