ひとりぼっちのさくらんぼ

宅配のお兄さんが、荷物をお姉さんに渡す時。

視線をお姉さんの後ろに立っていたあたしに移した。



あたしは目が合った気がして。

頭を少し下げてみる。



宅配のお兄さんは。

それには応えてくれず。



「それでは、またお願い致します」



お兄さんはお姉さんにまた機械みたいな口調でそう言って、「ありがとうございましたー」と、部屋を出て行った。



「……何、あれ」
と、思わずあたしは呟いた。



「何って……、宅配?」

「それはわかってるけど……。何、あの人。あたしのこと、完全に無視した」

「えー、無視って、本当に?」

「頭を下げたのに、こっちをチラッと見ただけだったよ」



「別にいいんだけど」と言いつつ、なんだか気分が悪い。

もしかしてあたしの外見が派手だから?

関わらないようにしようってこと?



「J Kちゃんが頭下げたつもりでも、下げきれてなかったんじゃない?」



お姉さんはのんきな口調でそう言って、リビングに戻って行く。

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