ひとりぼっちのさくらんぼ
「下げきれてなかったとか、あります?」
「あるんじゃない?お辞儀ってあなたが思っているより、難しいものだよ」
お姉さんはリビングのローテーブルに届いた荷物を置く。
あたしはまだ納得出来ないまま、ソファーに戻る。
(やっぱり座ったっていう実感とかが無いんだよなぁ)
お姉さんはキッチンカウンターに置いてあるペン立てからカッターナイフを取り出し、
「来た、来たー」
と、荷物を開ける。
あたしは、
「誰からの荷物?」
と、お姉さんに尋ねる。
「過去の私から」
と、お姉さんは言う。
「は?」
「正確には数日前の私から。頼んでおいたんだよね、今日は大好きな高級チョコレートを食べようと思ってさ」
お姉さんは笑って、
「今ってね、インターネットショッピングがあなたのいる時代より身近なんだよ」
と言ってから、
「私に誰かからの荷物が届くことなんて、ほぼ無いよ。ほとんど、私から私への荷物だよ」
なんて言う。